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​群星の中で

八重山で晴れた日の夜、町の光が届かない場所に行く。

圧倒的な星の光に我を失う。

八重山の人に聞かされた。

「星を見たければ、新月の夜、月の出ない日の方がいい」と。

月の明かりで星が見えにくくなるそうだ。

そこまでの圧倒的な星の光に包まれたことなど、

普段暮らす町で感じたことは一度もなくて、

初めて八重山の満天の星に覆い尽くされた夜空を観た時は言葉を失くした。

生まれて初めての星の光の洪水に包まれて、

知らぬ間に涙が溢れて仕方がなかった。

悲しいのではない、嬉しいのとも違う。

ただただ、自分が生きている、ということを感じたのかもしれない。

この宇宙という広大な世界、

何億年ともいう時間の中、

一人の人間はなんとちっぽけなんだろう。

だけど、ほんの一瞬でも、

その片隅にでも、自分がいた、という事実は決して消すことはできない。

琉さんも、同じようなことを感じてこの唄を作ったのだろう。

そう思いたい。

あのあまたの星のことを群星(もろぼし)と言うのか。いい言葉だな。

いつか、群星に包まれながら、この唄を聴いてみたい。

一瞬でも構わない、琉さんの声に浸っていたい。

その事実は、永遠に消えはしないのだから。

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